ギフト株式会社

JOURNAL裏話や本音のところ

しなやかに変化しながら、変わらないものを追求する(後編)

嵜本さんとのスペシャルトーク後編は、バリュエンスグループのこれからについて。永続的に成長する企業づくりのために、何を考え、行動しているのか。嵜本さんの哲学を語っていただきました。前編はこちら(リンク)

お客さまや地球目線で、真面目に、ビジネスを設計する。

池戸:昨今は、社会課題解決型の企業が注目されている潮流がありますよね。自社の利益追求が社会貢献と正比例しているというか。今後はむしろそういう企業でないと生き残っていけない時代がくると感じていますが、嵜本さんはどうですか。

嵜本さま:間違いないですよ。海外はヨーロッパ中心に進んでいますが、日本は遅れていると言われている。流通業界でも社会課題に興味関心を持っているプレイヤーは、本当に少ない印象です。だからこそ追い風だなと思っていて、真面目にお客さまや地球目線でビジネスを設計したら結果的に勝てると思っています。今はそこをどう設計するかに時間を割いているところです。

池戸:世間がサステナブルを意識しはじめて、バリュエンスのビジネスに寄って行っているような感じもありますが、この未来は予測していましたか。

嵜本さま:いやーありえないですよ。当時は叩かれていましたから。今はとんでもない追い風が吹いているので、この追い風に乗れるかっていうのが重要ですよね。スピードを上げていかないと。面白いことになりそうだなとは思います。

池戸:競合他社もその風に乗っているんですか?

嵜本さま:若干はあると思いますが、顧客からどのように利益を得るかという視点での買取をしている印象はありますね。その辺も最近は異常なまでに透明性を求められる時代なので。おそらくすべてのサプライチェーンにおいてトレーサビリティって当たり前になると思うんですよ。QRコードを読んだらその商品がどのようにつくられたか、見える化が進んでいますよね。これからますます加速することは見えているから、僕たちはこの商品を手放した人がどんな人なのか、どんな経路で買取をして、メンテナンスは誰がやったのか。そこまで見える化したいと考えています。

池戸:それはお客さまへの信頼にも繋がりますね。

瞬間風速の購買から、心が豊かになる購買体験に。

嵜本さま:さらにその先の未来は、設定した粗利率より商品が高く売れた場合、その差額を商品を手放した方にキャッシュバックする、ということも考えています。必要以上の利益はすべてお返ししますと言われたら、周りの人に言いたくなるじゃないですか。思わず人に言いたくなるクチコミをどうつくれるか、結局はそれが企業の生命線になるんです。

池戸:2022年2月にオープンしたALLU表参道店も、新しい取り組みにチャレンジしているそうですね。

嵜本さま:すべての商品にプライスタグだけでなく、二酸化炭素排出や水使用量の削減貢献量を記載したタグをつけています。つまりそのリユース商品を一つ購入することで、一つ新品をつくるために発生する環境負荷のうち、タグに記載されている分の削減に貢献できたという考え方です。今までのリユースは「10万円のものが8万円で買えてラッキー」というもの。これだけではもう誰も発信しませんよね。でも「8万円で買えた上に、世の中や地球にとってポジティブな行為をした」と目に見えて感じられれば、SNSで発信してくれる可能性があるなと思っています。

池戸:おもしろいですね。

嵜本さま:これまでのブランドの購買って、実質的に満たされるという瞬間風速でしかない。いいものを買っても、もっともっとが繰り返されるので、負のスパイラルに陥っちゃう。でもいいことしたなっていう購買は、心の中に残り続ける。そんな心が豊かになる購買体験をつくっていきたいんです。

池戸:これからバリュエンスは永続的に成長していける仕組みをつくっていくわけですよね?引き際って考えてたりするんですか。

嵜本さま:たまに考えますよ。後継者づくりとか。極端な話、自分がいなくても機能する組織をつくらないといけないじゃないですか。寂しさもありますけど、感情が入ると意思決定がブレちゃうから、うまく客観視してフラットに考えたいですね。

今この瞬間から、未来を見据えてタネを蒔く。

池戸:話は変わりますが、サッカークラブ南葛SC経営の件。稲本選手や今野選手など、僕ら世代からは大スターだった選手がどんどん加入していますね。SNSで晋輔さんの投稿を見て思わず声が出ました。これはどんな意図で取り組んでいるんですか。

嵜本さま:自分が一生かけて夢中になれるものを増やしていくことが、自分自身の可能性を広げるアクションであり、バリュエンス自体のポテンシャルを見出すきっかけともなると思って仕込んでいます。5年後、10年後、20年後にも成長している状態をつくるためには、今この瞬間からいろんな新しいタネを蒔いていかないといけない。今の僕にできることを考えて、未来を見据えた一手を打っている感じ。飽きがこない会社でありたいんです。それは、僕がバリュエンスに求められている唯一の役割だと思います。あとはみんな優秀なので、任せて。そうやってちゃんと役割分担ができているのは、いい組織に成長したなと思っています。

池戸:自分の意欲を下げずに事業をずっと続けていけているのは、何に一番満足を得ているからですか。

嵜本さま:常に現状不満足ではありますよね。そもそもまだ何も成し遂げていないと思っています。自分が思い描く構想が100とすると、まだ10くらいという感じ。今飽きたらやばいよねっていう(笑)

池戸:ずっと言っていそうですよね。ずっと10(笑)ゆくゆく目指すは世界展開ですか?

嵜本さま:そうですね。海外は今20店舗くらいやっていますが、簡単ではないです。当然ですけど、日本と同じやり方を持ち込んでも上手くいかない。でも売上利益を失っても、得られる体験や経験の価値は大きくて。失敗も同業他社より早く改善するきっかけをもらえていると、かなりポジティブに受け止めています。社員のみんなも現状に満足することなく努力を続けてくれているので、この積み重ねは5年後の成長に繋がると信じています。今はやり続けるしかないかなと。

池戸:最後に。自分の人生の終わりに、どんな人生だったと思いたいですか。

嵜本さま:僕はその人の記憶に、自分がどれだけ残れるかが重要だと思っていて。もし誰かが人生の最後に「嵜本がいたおかげで人生が変わった」とか「あいつがいなかったら今の自分がいなかった」とか、そういう言葉が出てきたらその人の人生に存在を許されたと思います。でも今はまだそういう人は少ないかな。つまり僕は、まだ何も人の心を揺さぶったり、影響を与えたりできていない。だからいつか人の記憶に残るような人生を歩みたいなと思いますね。もちろん、ポジティブな意味で(笑)

嵜本晋輔 sakimoto shinsuke

2001年にJリーグのガンバ大阪に入団するが、2003 年に戦力外通告を受け退団。22歳でサッカー界から引退。2011年12月にブランド品のリユースなど、サステナブルな事業を行う株式会社SOU(現 バリュエンスホールディングス株式会社)を設立。2018年東証マザーズ市場に上場。現在はガンバ大阪や、DリーグのKOSÉ 8ROCKS(コーセーエイトロックス)のオフィシャルパートナーとなるほか、2021年9月には「キャプテン翼」の著者である高橋陽一氏がオーナーを務める関東1部リーグのサッカークラブである南葛SCの株式を33.5%取得。株式会社南葛SCの取締役も務め、東京23区で初めてのJリーグチームをつくるべく、 邁進している。

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