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JOURNAL裏話や本音のところ

経営理念が定まると、売上が上がるのか。

ブランディングの仕事をご一緒するうえで、僕たちはまず企業理念から設計・再設計するようにご提案させていただいている。その時、このような質問をうけることがある。

「経営理念が定まることで、会社の売上が上がるのか。」

実際企業の商品・サービスによるところはあるが、営業成績が上がりやすいケースがあるので過去の実体験をご紹介したいと思う。

ある墓石販売会社のお客さまの経営理念を策定させて頂いた時の話。その会社は、全国に霊園を持ちつつ、お墓を売る仕事をしていた。 お墓を買う。あまり馴染みのない買い物かも知れないので少し説明をすると、値段はお墓によって(その霊園によって)結構な差があるものである。構造としては不動産と似ており、区画+上モノ(墓石)を買う形になる。霊園の立地や、霊園内の設備・環境によって金額も様々。100万円のものもあれば、数百万のものもある。ちなみに、お墓を売る会社は、霊園を運営している会社自体の営業さんがお墓を売る場合もあるが、代理店が販売する場合もある。同じものを買うのに買ったところによって値段が変わってくるそうだ。

理念を策定するきっかけになったのは、ある社員さんからの進言があったからだという。

「高いものを買っていただく際に、立地が良い、霊園がきれいなどの条件だけでは、価値を感じていただく上で無理が生じる。なんのためにお墓があるのか。自分たち自身が信じられる指針が欲しい」。

お墓を買う人は2つのパターンに分かれる。ひとつは、すぐ買う必要があって買う人。つまり近くでお墓を持っていない方で家族に不幸があった方。もうひとつは、生前墓。安い買い物ではないため、もしもの時に家族に迷惑をかけないために生きているうちに自分のお墓を買うという方だ。生前墓は、縁起がいい、長生きにつながると言われることもあり、近年では若いうちに自分のお墓を買って、まだ納骨されているわけではないが定期的にお参りに来る人も多いらしい。

春には桜が美しくならぶ霊園には、お弁当を持参で来られる方も多い。

理念策定をさせていただいたお客さまのお墓は、立地がよく、霊園も美しい。家で言えば高級住宅街に一軒家を買うようなもので、高価格帯の営業をしている会社だった。理念策定にあたっては、様々なヒアリングやディスカッションを通して「お墓参りをすることにどんな価値があると考える会社なのか」という点を明らかにしていった。

そもそも、お墓参りはご先祖さまの前で手を合わせて日頃の報告をしたり、感謝の気持ちを伝えること。それをご先祖さまの視点で考えた時にどうなのかという点に着目した。ご先祖さまとしては、やはり生きている人たちが幸せであってほしい。元気であってほしいと思うはず。また、お盆やお正月など離れ離れで暮らす親子などが、お墓参りのために帰ってくることも多いが、家族があつまって会話をしたり、絆を更に深めてくれるキッカケにしてもらえたら、ご先祖さまも本望なのではないか。そんな議論の末、経営理念は

家族、なごやかに。

と表現することに決定した。 この言葉が一つ定まったことで得られた効果は、驚くべきものだった。経営理念がほしいと提言した社員さんをはじめ、そのまわりの営業スタッフの売上成績が如実によくなった。これまでの1.5倍、2倍の月もあるほど。 僕自身、驚きの結果につながった理由を本人に聞いた時にいただいた言葉。

「条件や価格の話ではなく、お客さまに、自信を持って自分たちのお墓をご紹介できるようになった。なぜお墓が大事なのか。なぜお参りが大事なのか。自分たちの思想を語ることで、値段の話やお墓の石の素材の話をする前に購入を決めてくださる方が増えた。自分自身も信じられるものができて、自信を持って営業ができる。それを喜んで聞いていただくことでやりがいにもなる。」

効果は、営業担当の方だけではなかった。霊園の清掃や受付をするスタッフの方からも 「ただ仕事するだけではなく、ご家族で来られた方たちの笑顔が生まれるためのサービスに視点が向くようになった。お客さまとの会話も増えた。」 といった声をいただいた。

さて、話を最初に戻そう。経営理念が定まると売上が上がるのか。その答としては、高価格帯のサービス・商品(付加価値で勝負するもの)に関しては、営業さんの成績などが分かりやすく向上すると考えられる。手段ではなく目的を語ることができるようになるため、お客さまの心を掴むことができるからだ。 ただ、どんな商品・サービス、どんな職種であっても効果は実感できると思う。

目的意識と意味付けを持つことで、日々の行動にかすかな変化が生まれる。その積み重ねは大きな結果として現れるはずだ。 経営理念を策定することは、「なんのために」を策定することでもある。そして、すべての判斷に軸が生まれる。その効果は、じわじわとひろがり、強い会社を支える筋肉になっていくのである。

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